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人生は曲がりまっすぐだァ!   ――学力と知恵を使い分けようの巻――

「□□さんの御主人は、○○銀行の頭取になったんですって。東大出身なんですってよ。すごいわねェ」
「やっぱり出世する人はいい大学を出ているのねェ。うらやましいわ。うちの主人は高卒ですもの」
「あら、うちもよ。せめて、子供たちはいい大学に入れたいわよね」
「ほんとにそうだわ。うちの長男は部活に夢中になっていて、ちっとも勉強しないのよ。困ってるの」
「うちの娘も似たようなものよ。いい大学に行くために有名高校に入れなくちゃ、ね」
すると、ある主婦が会話にはいってきました。
「ねえ、うちの人も東大を出たわよ」
「えっ? ウソでしょう? お宅の旦那さんは職人さんなんだから、腕を磨くために若いときから親方に弟子入りしたんじゃなかったの?」
「でもほんとよ。だって、東大の工事を請け負ったので1年ばかり通っていたわよ」
「・・・・」
 こんな会話を耳にしたのは昭和も40年代のことだったと記憶しています。
今では、笑い話になってしまいましたが、当時は真剣に、いい高校からいい大学へ進学していい会社に入社するというコースがベストライフビジョンだと考えられていたのです。
サラリーマンとなって人生を謳歌すること。それが常識とされていた時代でした。
サラリーマンは、会社という囲いの中にあって自分の人生を託しておけば安泰でした。定年まで職を失うこともほとんど無く、勤続年数とともに収入も増え、会社の指示のままに仕事をしていさえすれば、平穏無事な人生を送れた、そんな時代だったのです。
 

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